なぜカウンセリングなのか?

現代社会はさまざまな問題にあふれ、どうしていけばよいのか、生き方に迷うことは決して少なくありません。特に昨今は社会的・経済的な不安定さが増し、現実的に困る機会が大変増えてきています。

問題解決のために、多くの方はまず具体的な助言を求め、さまざまな場で相談されます。それで十分な場合もありますが、必ずしも納得いくものになるとは限りません。

なぜでしょうか?
それは、何かに困るとは、その具体的な何かに困っているだけでなく、困っている自分にも困っているからです。ただそのことになかなか気づけないので、迷走しやすくなるのです。

カウンセリングが最も力を発揮できるのはその点です。困っておられる方が、困りごとと、困っているご自身にどう対処していけばよいかについて、丁寧にお話を伺いながらともに考えてまいります。
その中で、本当の意味でご自身が納得できる方向が見えてくるでしょう。

カウンセリングとは何をするものか

カウンセリングとは何をするものでしょうか?
いちばんシンプルに言えば、何かにお困りの方のお話をカウンセラーが伺いながら、どうしたらよいかをご一緒に考えていくこと、と言うことができます。

これではあまりに簡単すぎるので、もう少し詳しく表現しましょう。
カウンセリングでカウンセラーは、相談者の方のさまざまな思いに寄り添いながら、その思いをひとつひとつ丁寧に受け止め解きほぐした上で、あらためて相談者の方にお返しします。それは相談者の方ご自身が考えを深め、歩んでいくためなのです。

その歩みは必ずしも平坦なものとは限らないかもしれません。けれども、カウンセラーはつねに相談者の方とともに歩み、相談者の方がお持ちでいながら気づいていない力にも目を配りつつ、ご自身がこころから納得できる方向をともに探っていきます。

たとえて言うなら、カウンセラーは相談者の方とともに歩む登山のガイドのようなものかもしれません。足元に注意を払いつつ、どの道を通っていけばいいのか、どちらの方向が道が開けそうかを、相談者の方とともに探しながら歩んでゆくのです。

その歩みが進むにつれ、相談者の方ご自身の自己理解が深まり、当面の問題解決にとどまらず、新たな可能性や新たな展望が開けてくることもあります。
また、問題と考えていたことの意味が変わってきたり、問題と思っていたことがそもそも問題ではなくなったりする場合もあるのです。

カウンセリングはどのように進めていくのか

カウンセリングに関することでは、カウンセラーが一方的に決めることは決してありません。
カウンセリングで何を扱うのか、どのように進めていくのかは、必ず相談者の方のご希望を伺いながら、話し合って決めていきます。
相談者の方のお気持ちがつねにいちばん大事なのです。

初回のカウンセリングでは、まずお話を伺ったうえで、さしあたっての見立てをお伝えします。その上で、カウンセリングを継続して行なっていくかどうかを話し合います。継続することになったら、次回の予約をしていただきます。

カウンセリングを継続する場合には、一定の間隔で次回の日時を予め決めて行なっていきます。次回予約を決めず、気持ちが向いたときにその都度予約を入れるやり方は通常行ないません(もちろん継続しないのも自由です)。

頻度は相談者の方のご事情や相談内容によってさまざまですが、一般的には1週間または2週間に1回です。間を長く取る場合もありますが、あまり間が空いてしまうとつながらなくなってしまうので、最長で1ヵ月に1回程度になるでしょう。

カウンセリングがどのぐらいの期間になるのかは、ケースバイケースで一概に言えません。
相談者の方がもうそろそろいいかもしれないと思われたら、そのことをカウンセリングのなかでお話しいただいて、それまでカウンセリングがどのようであったか、そして今後の見通しがどうか、カウンセラーと話し合いながら、具体的に終結の日程を決めていきます。

カウンセリングと心理療法

カウンセリングという言葉は一般によく知られていますが、「心理療法」という言葉はそれほど馴染みがないかもしれません。
当オフィスで「カウンセリング」と言う場合、「心理療法」のことを指しています。以下言葉の用法についてご説明します。

「カウンセリング」という言葉は一般に幅広い意味があります。例えば、化粧品売り場で販売スタッフが対面で顧客の美容上の相談に乗ることも、カウンセリングと呼ぶようです。そうしたさまざまな用法と区別するために、心理療法の意味で「心理カウンセリング」という言葉もよく使われるようです。

これに対し「心理療法」の意味は明確です。臨床心理学の専門家が、専門的な知識や技法に基づき、相談者の方のお話を伺うことを通して、その方がその方らしくご自身の人生を歩んでいけるよう援助することを言います。

イメージの利用について

非言語的表現

当オフィスではユング派心理療法の考え方に基づいた心理療法を行なっています。
カウンセリング/心理療法では、語ること、言葉にすることをとても大事にします。しかし、こころの問題は、言葉だけではうまく表現できないことが少なくありません。そのようなときに、言葉によらない表現の仕方、いわゆる非言語的表現を用いる場合があります。ユング派心理療法では、言葉によらないイメージによる表現を重視しています。

描画

最もよく用いられるのが描画です。
描画もいろいろなやり方がありますが、美術の作品制作ではないので、多くの場合カウンセラーがこれこれのものを描いてくださいとお願いして描いていただきます。
絵はどなたが描いても必ずその人らしさが出ます。描かれた絵をもとに、相談者の方とカウンセラーが話し合いながら、理解を深めていきます。

また、絵と並んでよく用いられるのが夢です。どなたも睡眠中に夢を見た経験はおありと思います。夢は、見ようと思って見るものではなく、見てしまうものですが、だからこそ、その方ご自身のこころの有り様をよく表現すると考えられています。その方が自分はこうであると考えている以上のことを夢は表現しているのです(心理学的には無意識の自己表現と呼ばれます)。夢はしばしば意味がわからず、矛盾に満ち、謎めいています。こういう夢はこういう意味があると一義的に決まっている訳ではなく、同じ夢をさまざまな角度から解釈することもできます。しかしそれだからこそ、カウンセリングの中でカウンセラーとともに夢について考えていくことが、相談者の方ご自身の理解を深めることになるのです。